執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部(運営者情報)
最終更新日:2026年10月19日
「細かいことは、離婚してからそのつど話せばいい」
「相手と話すのがつらいから、まずは離婚だけ済ませたい」
離婚の話し合いが続くなか、そう感じている方は少なくないと思います。けれども、離婚して父母が別々に暮らし始めたあとも、子どものことで相手とやりとりする場面は続きます。取り決めがないと、その都度、一から話し合うことになります。
この記事では、公的機関の資料をもとに、次のことをわかりやすく解説します。
- 取り決めをしないまま離婚する家庭の割合
- 取り決めがないと困りやすい場面5つ
- 口約束だけでは困る理由と、離婚前に文書で決めておく方法
取り決めをしないまま離婚する家庭は少なくない
こども家庭庁の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、離婚によってひとり親になった世帯のうち、養育費の取り決めをしている割合は母子世帯で46.7%、父子世帯で28.3%でした。親子交流(面会交流。離れて暮らす親と子どもが会ったり連絡を取ったりすること)の取り決めをしている割合は母子世帯で30.3%、父子世帯で31.4%です。養育費も親子交流も取り決めをしている割合は、母子世帯・父子世帯のどちらでも5割に届いていません。

この調査は2021年11月1日時点の推計値で、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となる単独親権のみだった時代のものです。最新の調査が公表された際には、数字を差し替えます。
「相手と関わりたくない」気持ちから、決めないまま離婚する人も
同じ調査では、養育費の取り決めをしていない世帯に、その理由も尋ねています。母子世帯で最も多かったのは「相手と関わりたくない」(34.5%)でした。父子世帯で最も多かったのは「自分の収入等で経済的に問題がない」(22.3%)で、次に多かったのが「相手と関わりたくない」(19.8%)です。親子交流でも、母子世帯・父子世帯のどちらも「相手と関わり合いたくない」という理由が上位に入っています。
相手と話したくない気持ちは、とても自然なものです。ただ、取り決めがないと、関わりを避けたくても必要が生じるたびに相手とやりとりしなければならなくなります。関わりの回数を減らすためにこそ最初に決めておくことが大切になります。
取り決めがないと困る場面5つ
ここからは、取り決めがないまま離婚後の子育てを始めた場合に困りやすい場面を5つ紹介します。共同親権でも単独親権でも起こり得る場面です。共同親権で重要なことを一緒に決める場面のトラブルは、共同親権の離婚後に起きやすいトラブル4つと、取り決めで防ぐ方法で解説しています。
1. 養育費が「いくら・いつまで」でもめる
養育費とは、子どもが自立するまでにかかる衣食住や教育、医療などの費用を、父母で分担するためのお金です。金額、支払日、支払う期間、振込先などが決まっていないと、「払った・払っていない」といった食い違いが起こりやすくなります。
「いつまで払うのか」も、もめやすい点です。「成年(18歳)まで」「20歳まで」「大学を卒業するまで」など、考え方が分かれます。法務省の資料では、大学在学中は子どもが自ら稼いで自立することが難しいため、養育費の支払義務を負う場合が多いと説明されています。また、支払期間の終わりは「子が22歳に達した後の3月まで」のように具体的に定めることが勧められており、成年年齢が18歳に引き下げられた(2022年4月1日)ことから、「成年に達するまで」という定め方は避けるよう注意されています。
さらに、父母のどちらかが再婚したり、子どもが再婚相手と養子縁組(法律上の親子関係をつくる手続)をしたりした場合に養育費がどうなるのかも、問題になりやすい点です。法務省の資料では、普通養子縁組をしても、養子と実父母の親子関係は基本的に終了せず、養子と実父母は互いに扶養義務を負うとされています。
また、取り決めたあとに経済状況や生活状況が変わった場合は、父母の話し合いや家事調停、家事審判(裁判所の手続)で養育費の額を変更できることがあるとされています。ただ、再婚や養子縁組をした場合に実親の養育費が具体的にどうなるかは、個別の事情によって判断が分かれます。あらかじめ「再婚や養子縁組をしたら、どう見直すか」を話し合って決めておくことが考えられます。具体的な状況については、専門家にご相談ください。
なお、2026年4月1日以降に離婚した場合は、養育費の取り決めがなくても、子どもと主に暮らす親がもう一方の親に対して、子ども1人あたり月2万円の「法定養育費」を請求できるとされています。ただし、法定養育費は取り決めができるまでの暫定的なものとされています。公的機関の資料では、父母それぞれの収入に応じた額を取り決めておくことが重要とされています。
離婚前に決めておくこと:金額、支払日、支払方法、いつまで払うか(大学進学の場合を含む)、再婚や養子縁組をしたときの見直し方
2. 入学金や塾代など「特別な出費」を誰が払うかでもめる
毎月の養育費とは別に、入学金や、大学などの授業料といった大きな出費が生じることがあります。法務省の冊子では、こうした特別な出費の負担についても、あらかじめ定めておくことが考えられるとされています。
決めていないと、出費のたびに「養育費に含まれているはず」「聞いていない」といった食い違いが起こりやすくなります。
離婚前に決めておくこと:特別な出費の範囲と分担、事前に相談するかどうか
3. 親子交流が「毎回の交渉」になり、続かなくなる
会う頻度や時間、場所、方法が決まっていないと、会うたびに日程の交渉が必要になります。子どもも、次にいつ会えるのかがわからず、予定を立てにくくなります。
同調査では、取り決めの有無にかかわらず、現在も親子交流を行っている世帯は、母子世帯で30.2%、父子世帯で48.0%でした(取り決めのある世帯だけではなく、全体の割合です)。親子交流は取り決めがあって初めて続けられるものではありませんが、取り決めがないまま続けていくには、父母がそのつど調整し続ける必要があります。
離婚前に決めておくこと:会う頻度、時間、方法(オンラインや電話を含む)
4. 受け渡しで顔を合わせる、遅刻や急な体調不良で予定が崩れる
子どもの受け渡しの場所や時間が決まっていないと、毎回、相手と直接連絡を取り、顔を合わせることになります。遅刻したとき、子どもが熱を出したとき、天候が悪いときなど、どうするかについてもめることもあります。
法務省の冊子では、待ち合わせの場所や、事情が変わった場合の連絡先などを取り決めておくことが考えられるとされています。
離婚前に決めておくこと:受け渡しの場所と時間、遅れるときの連絡、中止になったときの代わりの日
5. 夏休み・年末年始・誕生日の過ごし方が、毎年の話し合いになる
長期休みや年末年始、子どもの誕生日は、父母のどちらも子どもと過ごしたい時期です。決めていないと、毎年同じ話し合いを繰り返すことになります。
離婚前に決めておくこと:年ごとに交代する、前半と後半で分ける、など
5つに共通するのは「毎回の交渉」と「言った・言わない」
5つの場面に共通しているのは、場面が来るたびに、相手と一から話し合うことになる点です。やりとりの負担が続くだけでなく、子どもも、次にいつ会えるのか、休みをどこで過ごすのかがわからないままになります。口約束で決めていても、時間がたつと記憶が食い違い、「言った・言わない」になりやすくなります。
場面ごとの詳しい決め方は、後日別記事で解説します。

口約束だけでは困る理由:文書に残しておくメリット
文書があると、使える制度がある
養育費について父母間で取り決めた内容を文書に残しておくと、養育費が支払われない場合に、公正証書(公証人が作成する公文書)などがなくても、その文書をもとに、相手の給料などの差押え(財産を強制的に取り立てる手続)を裁判所に申し立てられるとされています。これは、養育費に認められた「先取特権」(ほかの債権者より優先して支払いを受けられる権利)にもとづく制度で、子ども1人あたり月8万円までとされています。法務省の冊子では、父母双方の署名・押印のある文書で定めておくことが勧められています。
口約束だけでは、そもそも何を約束したのかを示す文書がありません。制度の利用には個別の要件があり、最終的には裁判所が判断しますので、具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。
親子交流は、約束の内容を確かめる出発点になる
親子交流が約束どおり行われない場合の履行勧告(取り決めを守るよう勧告してもらう手続)などは、調停や審判(裁判所の手続)で決めた場合の制度とされています。それでも、父母が取り決めた内容を文書にしておけば、何を約束していたのかが明確になり、改めて話し合ったり、家庭裁判所の調停を利用したりする際の出発点になると考えられます。
取り決めを残す「共同養育計画書」
共同養育計画書とは
こうした取り決めを文書に残す方法が、共同養育計画書です。共同養育計画書とは、離婚や別居をする父母が、離婚後の子育てについて取り決めておく文書のことです。
子どもの健やかな成長のための文書であると同時に、父母が毎回の交渉やもめごとを減らし、離婚後の生活を穏やかに送るための備えにもなります。作成は法律上の義務ではありませんが、改正後の民法で、離婚時に父母の協議で決める事項に「監護の分掌(子育ての分担)」が加わるなど、国も作成を勧めています。基本は、共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目で詳しく解説しています。
作り方は大きく3つ
- 自分たちで作る:公的機関や支援団体が公開している記載例などを参考に、父母で作る方法です。費用はかかりませんが、この記事で紹介した受け渡しの遅刻時や長期休みのように、実際に始めてから困る細かい場面は、基本の項目だけでは盲点になりやすいポイントです。
- 専門家の支援を受ける:弁護士に依頼したり、ADR(裁判所の外で、中立な第三者が話し合いを支援する手続)を利用したりする方法です。個別の事情に合わせた助言を受けられる一方で、依頼する内容によっては費用が比較的高額になることがあります。
- アプリで作る:共同養育を支援するアプリの案内に沿って、項目を選びながら作る方法です。相手と顔を合わせずに進められるものもある一方で、相手にも同じアプリを利用してもらう必要があります。
それぞれの特徴や費用の考え方は、後日別記事で詳しく比較します。
相手と顔を合わせずに決めるなら:Copakの共同養育計画書
「取り決めは必要だとわかった。でも、相手と向き合って細かく話すのはつらい」。そうした方のために、一般社団法人 共同監護機構が提供しているのが、共同養育アプリ「Copak(コパック)」の共同養育計画書の作成機能です。
項目ごとに選択肢から選び、合意できたところからまとめる
Copakでは、協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていきます。顔を合わせなくても、提案、確認、代わりの案の返信まで、すべてアプリ内で進められます。この仕組みは特許出願中です。
この記事で紹介した場面も、選択肢と解説を見ながら決められます。たとえば、次のような場面です。
- 受け渡し:学校や園への登校・帰宅をもって受け渡しとするなど、父母が直接顔を合わせずに済む決め方
- 遅刻や体調不良で予定が変わったとき:代わりの日をどう決めるか
- 夏休み・年末年始・誕生日:年ごとに交代するなど、イベントごとの過ごし方
- 養育費:金額や支払日などの具体的な入力
解説文とテンプレートは、弁護士事務所の監修を受けています。合意した計画書には、父母それぞれが電子印鑑を押します。
決めた後の予定の調整も、同じアプリで
決めたあとの運用も、同じアプリで行えます。共同養育カレンダーでは、受け渡しや長期休みの予定を、YES/NOのワンクリックを中心に調整できます。連絡は定型文が中心のメールで行えるため、必要なやりとりを落ち着いて進められます。取り決めがないと「毎回の交渉」になりやすい場面の、受け皿になります。
離婚協議書に書く主な内容もカバー。単独親権にも対応
Copakの共同養育計画書は、親権や財産分与、養育費など、離婚協議書に書く主な内容もカバーしています(年金分割は含みません)。なお、計画書で合意しただけで親権者が決まるわけではなく、離婚届などで定める必要があるとされています。
また、Copakは、共同親権だけでなく、単独親権の場合にも対応しています。親子交流や養育費、長期休みの過ごし方などを、取り決めておけます。なお、Copakは父母の交渉を仲介するサービスではありません。
料金、相手に提案する前に知っておきたいこと
共同養育計画書の作成は、一般会員(有料)の機能です。料金は1名あたり、半年プラン5,000円、年間プラン8,000円(いずれも税込)で、子どもが2人以上でも変わりません。
- 父母の双方が一般会員になる必要があります。 一方だけでは一般会員の機能は使えないため、申し込む前に、相手と利用するプランについて合意しておいてください。一方だけが加入した場合の返金には対応していません。
- 一般会員の期間が切れると、計画書は閲覧できなくなります。 期間内のダウンロード(別料金)をおすすめします。
相手への切り出し方は、後日別記事で紹介します。
相手と顔を合わせずに進められるのは、Copakの大きな特長です。ただし、身の危険がある場合は、まず安全を確保し、DV相談ナビ(#8008)や法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)にご相談ください。
よくある質問
口約束でも、取り決めをしたことになりますか?
口頭での約束も、父母の間の合意の一つではあります。ただし、時間がたつと記憶が食い違いやすく、何を約束したのかを後から確かめにくくなります。また、養育費の差押えの申立てのように、文書があることで使える制度もあります。離婚前に、共同養育計画書などの文書に残しておくことをおすすめします。
養育費を取り決めないまま離婚したら、養育費は受け取れませんか?
2026年4月1日以降に離婚した場合は、取り決めがなくても、子どもと主に暮らす親が、法定養育費(子ども1人あたり月2万円)を請求できるとされています。ただし、取り決めができるまでの暫定的なもので、支払う側が支払能力のないことなどを証明した場合は、全部または一部を拒めるとされています。収入に応じた額を取り決めておくことが重要とされています。個別の事情については、専門家にご相談ください。
離婚した後からでも、共同養育計画書は作れますか?
作成して構いません。法務省の資料でも、共同養育計画書は離婚や別居の前に作成するのが望ましいとされる一方、後から作成しても構わないとされています。Copakも、離婚後からでも利用できます。
まとめ
取り決めをしないまま離婚する家庭は少なくありません。取り決めがないと、養育費、特別な出費、親子交流、受け渡し、長期休みなどで、「毎回の交渉」と「言った・言わない」が起きやすくなります。
- 取り決めは、離婚前に決めておく
- 口約束ではなく、文書に残しておく
- 文書は、共同養育計画書にまとめる
まずは「合意できるところから」で構いません。
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出典・参考資料
- 子ども家庭庁「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」 https://warp.ndl.go.jp/web/20230410032756/http://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001027754.pdf
- 法務省「離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書」(2026年版。本文の「法務省の冊子」はこの資料) https://www.moj.go.jp/content/001322060.pdf
- 法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」(2026年1月改訂) https://www.moj.go.jp/content/001449160.pdf
- 法務省「子どもの健やかな成長のために 子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」 https://www.moj.go.jp/content/001323226.pdf
- 法務省「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00230.html
- 法務省民事局「養子縁組とは(未成年者を養子とする場合についてのよくある質問と回答)」 https://www.moj.go.jp/content/001399951.pdf
- 政府広報オンライン「法定養育費 取決めがなくても請求できる暫定的な養育費」 https://www.gov-online.go.jp/article/202607/entry-11412.html
- 政府広報オンライン「離婚後も『共同親権』が選択可能に。改正された子育てに関するルール」 https://www.gov-online.go.jp/article/202607/entry-11439.html
※この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。
