執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部(運営者情報)
最終更新日:2026年10月18日

「共同親権にしたら、子どものどういった部分について相手の同意が必要になるの?」
「意見が合わなかったら、子どもの進学や手術はどうなるの?」

2026年4月から、離婚後も父母の双方が親権(子どもの世話や教育、財産の管理などをする権利と義務)を持つ「共同親権」を選べるようになりました。気になるのは、離婚した相手と、子どもに関することをどう決めていくのか、という点ではないでしょうか。

共同親権では、日々のことは一人で決められる一方で、重要なことは父母が一緒に決めるのが原則とされています。この「一緒に決める」場面で、決め方や伝え方を決めていないと、トラブルになりやすくなります。

この記事では、公的機関の資料をもとに、次のことをわかりやすく解説します。

  • 共同親権で、父母が一緒に決めることと、一人で決められること
  • 離婚後に起きやすいトラブル4つ
  • トラブルを防ぐために、離婚前に決めておくこと
目次
  1. 共同親権で「父母が一緒に決めること」と「一人で決められること」
    1. 原則は一緒に決める。日々のことは一人で決められる
    2. 学校や病院は、親権の状況を知らない
  2. 共同親権の離婚後に起きやすいトラブル4つ
    1. 1. 進学・転校で意見が分かれ、手続の期限が迫る
    2. 2. 引っ越し(転居)に反対される、知らされない
    3. 3. 手術など大きな医療で、両親の同意を求められる
    4. 4. 学校からの連絡や行事の情報が、一方の親にしか届かない
    5. トラブルの多くは「決め方」と「伝え方」を決めていないことから
  3. トラブルを防ぐために、離婚前に決めておくこと
    1. 重要なことの「決め方」を決めておく
    2. 連絡と情報共有の方法を決めておく
    3. 見直しのタイミングを決めておく
    4. 決めたことは、どこにも記録されない
  4. 取り決めを残す「共同養育計画書」
    1. 共同養育計画書とは
    2. 作り方は大きく3つ
  5. 相手と顔を合わせずに決めるなら:Copakの共同養育計画書
    1. 項目ごとに選択肢から選び、合意できたところからまとめる
    2. 子どもの医療や学校の情報を、父母で共有できる
    3. 料金と、相手に提案する前に知っておきたいこと
  6. よくある質問
    1. 共同親権でも、子どもの日々のことは一人で決められますか?
    2. 父母の意見が合わないときは、どうなりますか?
    3. 離婚後に共同養育計画書を作っても大丈夫ですか?
  7. まとめ

共同親権で「父母が一緒に決めること」と「一人で決められること」

原則は一緒に決める。日々のことは一人で決められる

父母の双方が親権者になる場合、親権は原則として父母が共同で行うとされています(民法824条の2)。ただし、次の2つの場合は、父母の一方が単独で行えるとされています。

  • 監護・教育に関する日常の行為:日々の生活の中で生じる、子どもに重大な影響を与えない世話や教育に関する行為のことです。
  • 子どもの利益のため急迫の事情があるとき:父母で話し合ったり、家庭裁判所の手続を経たりしていては、適切なタイミングで対応できず、子どもの利益を害するおそれがある場合のことです。緊急の医療が必要な場合や、入学手続の期限が迫っている場合などが例に挙げられています。

法務省の資料では、一人で決められる例と、一緒に決める例が、次のように示されています。

一人で決められる例(日常の行為)一緒に決める例(重要なこと)
食事や服装子どもの転居
短期間の観光旅行進学先
心身に重大な影響を与えない医療心身に重大な影響を与える医療
習いごと子どもの財産の管理
高校生のアルバイトの許可
共同親権で一人で決められること(食事や服装、習いごとなど)と、父母が一緒に決めること(転居、進学先、重大な医療など)の図

学校や病院は、親権の状況を知らない

学校や病院は、誰が親権者で、父母がどう分担しているかを、通常は知り得ない立場にあります。そのため、の資料でも、必要と考える場合は親権者のほうから学校などに伝えるよう求められています。

つまり、重要なことは「一緒に決める」のに、父母の間で「どう決めるか」「どう伝えるか」が決まっていないと、学校や病院などの現場で食い違いが起きやすくなるという点です。

共同親権の離婚後に起きやすいトラブル4つ

ここからは、「一緒に決める」場面で起きやすいトラブルを、場面ごとに見ていきます。

1. 進学・転校で意見が分かれ、手続の期限が迫る

子どもの入学・転学・退学などの手続は、日常の行為には当たらないとされています。進学先をどこにするかで父母の意見が分かれると、話し合いが長引き、手続の期限が迫ってきます。

入学手続の期限が迫っている場合は、急迫の事情に当たり得るとされていますが、毎回そう扱われるとは限りません。進路や学校の選び方は、子どもの生活に長く影響します。「期限に追われて、片方が決めてしまった」という形になると、もう一方の不満が残り、トラブルにもなりかねません。

2. 引っ越し(転居)に反対される、知らされない

子どもの転居は、移動距離にかかわらず、同じ学区内であっても、基本的には日常の行為に当たらないとされています。転職や再婚、実家に近い場所への引っ越しなど、親にとっては自然な理由でも、子どもの学校や、もう一方の親との距離は大きく変わります。また、相手と子どもの世話を分担している場合や、親子交流に影響が出てくる場合などは、特にもめごとになりやすい部分です。

なお、父母は、お互いを尊重して協力する義務(父母相互の人格尊重・協力義務)を負うとされており、特段の理由のない無断での転居は、この義務に違反する場合があるとされています(DVや虐待から避難する場合は別とされています)。「いつ、どこに引っ越すのかを、どのように知らせるか」という点は、注意が必要な部分です。

3. 手術など大きな医療で、両親の同意を求められる

風邪やアレルギーなど日常的な治療や、通常のワクチン接種は、日常の行為に当たるとされています。一方、心身に重大な影響を与える医療は、父母が一緒に決めることとされています。

たとえば、国立成育医療研究センターは、保護者向けのお願い(2026年4月1日)で、手術や抗がん剤治療などは両親の同意が必要としています。両親が直接連絡を取りにくい場合は病院に知らせるよう求めていますが、病院がもう一方の親に代わって連絡することはしていないとされています(医療機関によって運用は異なる可能性があります)。

子どもの具合が悪いときに、もう一方の親と連絡がつかない。病院の説明を片方の親しか聞いていない。そうした場面が起きやすくなります。

4. 学校からの連絡や行事の情報が、一方の親にしか届かない

学校は、通常は事前に登録された緊急連絡先のうち、どれか一つに連絡すればよいとされています。そのため、運動会などの行事、成績、災害や事故の連絡が、登録されている一方の親にしか届かないことが起こります。

国のQ&Aでは、親権者には、情報共有の方法を事前に協議するよう伝えることが考えられるとされています。行事への参加についても、親権者があらかじめ協議し、学校などに申し出ておくと円滑とされています。

トラブルの多くは「決め方」と「伝え方」を決めていないことから

4つのトラブルに共通するのは、何を決めるかより前に、「誰が、どう決めるか」「どう伝えるか」が決まっていないことです。

共同で行うべきことを、相手に無断で決めてしまうと、経緯や態様によっては、あとで親権者の指定や変更などの手続で考慮される可能性があるとされています。

どうしても意見が合わないときは、家庭裁判所が、その事項について親権を行使する親を指定する手続(親権行使者の指定)があるとされています。これは、家庭裁判所の調停(裁判官や調停委員が間に入って行う話し合いの手続)や審判(裁判官が判断を示す手続)で行うものです。ただ、意見が分かれるたびに裁判所の手続を使うのは、父母にとっても子どもにとっても負担が大きくなります。

学校や転居などの詳しい決め方は、後日別記事で解説します。

共同親権で起きやすい4つのトラブル(進学、転居、医療、学校からの連絡)と、離婚前に決めておくこと(決め方と伝え方)の対応図

トラブルを防ぐために、離婚前に決めておくこと

法務省の「こどものための共同養育計画書」(2026年版)は、重要なことを決めるときの考え方を示しています。どの家庭にも同じ答えがあるわけではなく、子どもの利益にかなう形を、父母で話し合って選ぶことが前提とされています。

重要なことの「決め方」を決めておく

資料では、転居、医療、進学・就職など重要なことについて、子どもの利益にかなう場合は、父母間の取り決めで、決め方を定めておくことができるとされています。

場面決め方の例
進学・就職父母で話し合って決める/事前または事後に連絡する
転居父母で話し合って決める/事前または事後に連絡する
時間的な余裕のある手術などの医療父母で話し合って決める/事前または事後に連絡する

ほかにも、一方が決めたうえで他方に知らせる、話し合いにADR(裁判所の外で、中立な第三者が話し合いを支援する手続)のサポートを受ける、といった決め方が考えられるとされています。

また、「話し合って決める」と定める場合は、まとまらないときに、最後はどちらが決めるかも定めておくことが考えられるとされています。急いで対応が必要な場面に備えて、連絡の仕方や判断の仕方も決めておくと、迷う時間を減らせます。

連絡と情報共有の方法を決めておく

学校や病院からの情報を、どちらがいつ、どうやって共有するか。急ぎのときに、どの方法で連絡するか。これらを決めておくと、トラブル3・4のような場面を減らせます。学校などには、必要に応じて、親権者のほうから状況を伝えておくことも求められています。

見直しのタイミングを決めておく

子どもの成長や、父母の生活の変化にあわせて、取り決めを見直す機会も大切です。法務省の資料では、子どもの小中学校等への入学時や、父母の再婚時など、事情が変わりやすいタイミングで話し合う機会を決めておくと、再協議しやすくなるとされています。

決めたことは、どこにも記録されない

父母の話し合いで決めた子育ての分担などは、戸籍には記録されず、公的な文書も作成されないとされています(公正証書〈公証人が作成する公文書〉にすることは可能とされています)。決めたことを残しておくのは、父母自身です。2026年4月から離婚届で答えるようになった子どもの取り決めも、記入するのは取り決めの「有無」だけです。詳しくは離婚届の「取り決め」欄とは?2026年4月の改正点と、中身を残す共同養育計画書で解説しています。

なお、父母の間で取り決めをしていても、必要な家庭裁判所の手続が不要になるわけではないとされています。また、学校や病院などとの関係での扱いは、状況によって異なる可能性があります。具体的な事情については、弁護士などの専門家にご相談ください。

取り決めを残す「共同養育計画書」

共同養育計画書とは

決め方や伝え方を文書に残す方法が、共同養育計画書です。共同養育計画書とは、離婚や別居をする父母が、離婚後の子育てについて取り決めておく文書のことです。

子どもの健やかな成長のための文書であると同時に、父母が将来のもめごとを減らし、離婚後の生活を穏やかに送るための備えにもなります。作成は法律上の義務ではありませんが、改正後の民法で、離婚時に父母の協議で決める事項に「監護の分掌(子育ての分担)」が加わるなど、国も作成を後押ししています。基本は、共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目で詳しく解説しています。

作り方は大きく3つ

  • 自分たちで作る:公的機関や支援団体が公開している記載例などを参考に、父母で作る方法です。費用はかかりませんが、どこまで具体的に決めるか、相手とどう合意するかは自分たちで考える必要があり、話し合いが進まなかったり、離婚後になって「決めておけばよかった」となったりすることがあります。
  • 専門家の支援を受ける:弁護士に依頼したり、ADRを利用したりする方法です。個別の事情に合わせた助言を受けられる一方で、依頼する内容によっては費用が比較的高額になることがあります。
  • アプリで作る:共同養育を支援するアプリの案内に沿って、項目を選びながら作る方法です。相手と顔を合わせずに進められるものもある一方で、相手にも同じアプリを利用してもらう必要があり、個別の法的な助言は受けられません。

それぞれの特徴や費用の考え方は、後日別記事で詳しく比較します。

相手と顔を合わせずに決めるなら:Copakの共同養育計画書

「決め方を決めておきたい。でも、相手と向き合って細かく話すのはつらい」。そうした方のために、一般社団法人 共同監護機構が提供しているのが、共同養育アプリ「Copak(コパック)」の共同養育計画書の作成機能です。

項目ごとに選択肢から選び、合意できたところからまとめる

Copakでは、協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていきます。提案、確認、代わりの案の返信まで、すべてアプリ内で進められます。この仕組みは特許出願中です。

転居するときの連絡、子どもの急病や緊急の治療のときの連絡と判断、話し合いがまとまらないときの進め方など、この記事で紹介した「決め方」も、選択肢と解説を見ながら決められます。解説文とテンプレートは、弁護士事務所の監修を受けています。合意した計画書には、父母それぞれが電子印鑑を押します。

親権や財産分与、養育費など、離婚協議書に書く主な内容もカバーしています(親権者は、離婚届への記載などで正式に定める必要があるとされています)。単独親権の場合にも対応しています。なお、Copakは父母の交渉を仲介するサービスではありません。

子どもの医療や学校の情報を、父母で共有できる

Copakの「子どもデータバンク」では、学校の連絡先や、子どもが飲んでいる薬の種類など、子育てに必要な情報を父母で一元管理できます。トラブル3・4のように情報が一方の親にしか届かない場面に備えて、計画書で決めた情報共有を、同じアプリで続けていけます。連絡は定型文が中心のメールで、予定の調整は共同養育カレンダーで行えます。

料金と、相手に提案する前に知っておきたいこと

共同養育計画書の作成と子どもデータバンクは、一般会員(有料)の機能です。料金は1名あたり、半年プラン5,000円、年間プラン8,000円(いずれも税込)で、子どもが2人以上でも変わりません。

  • 父母の双方が一般会員になる必要があります。 一方だけでは一般会員の機能は使えないため、申し込む前に、相手と利用するプランについて合意しておいてください。一方だけが加入した場合の返金には対応していません。
  • 一般会員の期間が切れると、計画書は閲覧できなくなります。 期間内のダウンロード(別料金)をおすすめします。

相手への切り出し方は、後日別記事で紹介します。

相手と顔を合わせずに進められるのは、Copakの大きな特長です。ただし、身の危険がある場合は、まず安全を確保し、DV相談ナビ(#8008)や法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)にご相談ください。

よくある質問

共同親権でも、子どもの日々のことは一人で決められますか?

食事や服装、習いごと、通常のワクチン接種など、監護・教育に関する日常の行為は、父母の一方が単独で決められるとされています。ただし、ワクチン接種について父母の考え方が明白に異なる場合などは、協議することが望ましいとされています。何が日常の行為に当たるかは、個別の事情によって判断が分かれることがあるため、迷うときは専門家にご相談ください。

父母の意見が合わないときは、どうなりますか?

父母での話し合がまとまらない場合は、ADRの利用や、家庭裁判所の調停・審判の手続を使う方法があります。共同で行うべき特定の事項については、家庭裁判所が、その事項について親権を行使する親を指定する手続もあるとされています。急迫の事情がある場合は、一方の親が単独で対応できるとされています。

離婚後に共同養育計画書を作っても大丈夫ですか?

作成して構いません。法務省の資料でも、共同養育計画書は離婚や別居の前に作成するのが望ましいとされる一方、後から作成しても構わないとされています。意見が分かれやすい場面が見えてきてから、決め方を取り決めておくこともできます。Copakも、離婚後からでも利用できます。

まとめ

共同親権では、日々のことは一人で決められる一方で、転居や進学、重大な医療などは、父母が一緒に決めるのが原則とされています。トラブルの多くは、「誰が、どう決めるか」「どう伝えるか」を決めていないことから起きます。

  • 重要なことの決め方を、離婚前に決めておく
  • 学校や病院などの情報を共有する方法を決めておく
  • 子どもの成長や生活の変化にあわせて、見直す時期も決めておく
  • 決めたことは、共同養育計画書として文書に残す

まずは「合意できるところから」で構いません。

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出典・参考資料

※この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。