「もう、相手とは話したくない」
「顔を見るだけで、冷静でいられなくなる」
「でも、子どものことは決めなければいけない」
離婚を考えているときも、離婚したあとも、こうした気持ちを抱える父母は少なくありません。結論から言うと、相手と直接話さなくても、子どものことを決める方法はあります。
この記事では、直接話さずに子どものことを決める5つの方法と、決めたあとも相手との関わりを減らすための工夫を、公的機関の資料をもとに紹介します。あわせて、顔を合わせずに取り決めを文書に残す方法として、共同養育アプリ「Copak(コパック)」も紹介します。
「相手と話したくない」と感じるのは、めずらしいことではありません
取り決めをしなかった理由で多い「相手と関わりたくない」
こども家庭庁の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」(2021年11月1日時点)では、養育費や親子交流(離れて暮らす親と子どもが会ったり、連絡を取ったりすること)の取り決めをしていない世帯に、その理由をたずねています。「相手と関わりたくない」という回答は、次のとおりでした。
- 養育費(「相手と関わりたくない」):母子世帯34.5%(最も多い回答)、父子世帯19.8%
- 親子交流(「相手と関わり合いたくない」):母子世帯26.4%(最も多い回答)、父子世帯17.5%
いずれも、取り決めをしていない世帯のうちの割合です。この調査の時点では、離婚後の親権は単独親権のみでした。母子世帯でも父子世帯でも、相手と関わりたくない気持ちが、取り決めに進めない理由の一つになっていることがわかります。最新の調査が公表された場合は、最新の数字をご確認ください。
話さないまま離婚すると、やりとりはむしろ続きがち
取り決めをしないまま離婚すると、お金のこと、会う予定のこと、子どもの受け渡しのことなどを、その都度、相手と相談して決めることになります。話し合いを避けたつもりが、日々のやりとりの中で、何度も顔を合わせたり連絡を取ったりすることになる場合があります。取り決めがないと困る場面は、取り決めなしで離婚すると困る場面5つと、離婚前に決めておくことで解説しています。
なお、身の危険を感じるなど、安全・安心な話合いが難しいときは、無理に話し合う必要はないとされています(法務省)。一人で抱え込まず、専門家や相談窓口に相談してください。
「直接話さない」と「何も決めない」は別のこと
直接話さずに進めることと、何も決めないことは、別のことです。いったん取り決めを文書に残しておけば、そのあとのやりとりを減らせます。
離婚後の子育てについての取り決めを残す文書が、共同養育計画書です。作成は法律上の義務ではありませんが、公的機関も作成を勧めています。定義や決める項目は、共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目で詳しく解説しています。
父母の話し合いで決めた子育ての分担などは、戸籍に記録されず、公的な文書も作成されないとされています(公正証書〈公証人が作成する公文書〉にすることは可能とされています)。決めたことを残しておくのは、父母自身です。文書にしておけば、あとから内容を確かめられるため、同じことを何度も相手に確認する必要が減ります。
相手と直接話さずに決める5つの方法
次の5つは、どれも「直接話す」負担を減らす方法です。組み合わせて使ってもかまいません。ただし、完全に顔を合わせずに済むかどうかは、方法や状況によって異なります。
1. メールや書面など、文字だけでやりとりする
最も手軽な方法です。声や表情が伝わらないぶん、冷静に内容を確認できます。次のような工夫をすると、進めやすくなります。
- 用件を、子どものことだけに絞る
- 返信の期限を決める
- 送る前に、読み返す
文面が残るため、あとから確認できる点もメリットです。一方で、やりとりが何往復も続きやすいこと、文字だけでは意図が伝わりにくいこと、相手から返信がなければ進まないことには注意が必要です。
2. 弁護士に間に入ってもらう
弁護士に依頼すると、代理人(本人に代わって相手と交渉する人)として、交渉を任せられる場合があります。収入や資産が一定の基準以下などの条件を満たすと、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助で、無料の法律相談や弁護士費用等の立替えを利用できるとされています。依頼内容によっては費用が比較的高額になりやすいため、費用の考え方は共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るも参考にしてください。
3. ADRで、中立の第三者に入ってもらう
ADR(裁判外紛争解決手続)は、裁判所の外で、中立な第三者が双方の話を聴き、話し合いでの解決を支援する手続です。法務大臣の認証を受けた民間の事業者が行うものは、「かいけつサポート」と呼ばれています。分野には「家事」があり、離婚、親子交流(面会交流)、養育費に関する紛争が含まれています。
事業者によって、進め方や費用、取り扱う分野は異なります。顔を合わせずに進められるかどうかも、事業者にご確認ください。詳しくは、共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るで紹介しています。
4. 家庭裁判所の調停を利用する
調停は、裁判官や調停委員が間に入って行う、家庭裁判所での話し合いの手続です。離婚の調停(夫婦関係調整調停)では、当事者はそれぞれの待合室で待ち、調停委員が中立の立場で、交互または同時にそれぞれの話を聴きながら、話し合いを進めるとされています。つまり、相手と同じ部屋で向き合い続ける形とは限りませんが、同時に話を聴く場面もあります。
また、近年はウェブ会議を利用する場面が増えているとされています。ただし、利用できるかどうかや条件は、事案や裁判所によって異なります。希望がある場合は、申立先の家庭裁判所にご確認ください。手続や費用は、共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るで紹介しています。
5. アプリで、提案と確認を重ねる
共同養育を支援するアプリの中には、相手と顔を合わせずに、提案と確認を繰り返しながら取り決めを進められるものがあります。専門家の監修を受けたテンプレートや解説がついているものもあります。
注意点は、相手にも同じアプリを利用してもらう必要があることです。相手が利用してくれない場合は、ここまでの1〜4の方法に切り替えることもできます。

決めたあとも、関わりを最小限にするために決めておきたいこと
離婚したあとも、子どものことで相手とのやりとりが完全になくなるわけではありません。次の4つをあらかじめ決めておくと、顔を合わせたり、連絡を取ったりする機会を減らせます。
連絡の方法と範囲を決める
連絡手段を1つに絞る、連絡する内容を子どものことに限る、急ぎのときとそうでないときで使い分ける、といった決め方があります。具体的な連絡ルールの決め方は、後日別記事で紹介します。
受け渡しで顔を合わせない方法を決める
親子交流のとき、子どもの受け渡しは、相手と顔を合わせやすい場面です。次のような方法があります。
- 学校や園への登校・登園、下校・降園をもって、受け渡しとする
- 第三者に受け渡しや付添いを頼む
自治体によっては、親子交流の受け渡しや、父母間の連絡の調整を第三者が支援する事業を設けていたり、その費用を補助していたりします。対象や条件は自治体によって異なり、親子交流の取り決めがあり、支援を受けることに父母が合意している場合などが対象とされています。お住まいの市区町村にご確認ください。
予定の変更や、意見が分かれたときの進め方を決める
予定が急に変わったり、子どもの進学のように意見が分かれたりする場面は、離婚後にも起こります。変更を伝える方法と期限、まとまらないときに第三者(弁護士、ADRなど)に入ってもらうかどうかを決めておくと、そのたびに直接話さずに済みます。
子どもを伝言役にしない
相手と直接やりとりしたくないあまり、子どもに「お母さんに伝えて」「お父さんに聞いてきて」と頼むと、子どもが父母の間で板挟みになることがあります。伝えたいことは、決めた連絡の方法で、父母の間で伝えるようにしましょう。
顔を合わせずに計画書まで作るなら:Copakの共同養育計画書
「相手と向き合って細かく話すのは、つらい」「でも、決めたことは文書で残しておきたい」。そうした方のために、一般社団法人 共同監護機構が提供しているのが、共同養育アプリ「Copak」の共同養育計画書の作成機能です。アプリ内では「やくそく」という名前で表示されます。
項目ごとに選択肢から選び、合意できたところからまとめる
Copakでは、協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていきます。一方が案を作って提案し、もう一方が内容を確認して、合意できる部分は合意し、合意できない部分は代わりの案や理由を返します。この流れを、顔を合わせずに、すべてアプリ内で進められます。この仕組みは特許出願中です。使い方の流れや機能の詳細は、後日別記事で紹介します。
「直接話さずに済む」ための取り決めの例
Copakの共同養育計画書では、基本の項目に加えて、たとえば次のような、日々のやりとりを減らす決め方もできます。
- 父母間の連絡方法:アプリを使った連絡に限る、代理人や第三者を介する、など
- 学校などを経由した子どもの受け渡し:登校や下校をもって受け渡しとし、父母が直接顔を合わせずに済ませる、など
- 予定の変更や調整の方法:アプリで協議して決める、第三者を介して協議する、など
親権や財産分与(婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚のときに分けること)、養育費など、離婚協議書(離婚の条件をまとめた文書)に書く主な内容もカバーしています(年金分割は含みません)。なお、計画書で合意しただけで親権者が決まるわけではなく、離婚届や調停などで定める必要があるとされています。Copakは、共同親権だけでなく、単独親権の場合にも対応しています。
合意したあとも、同じアプリで
合意した計画書には、父母それぞれが電子印鑑を押し、アプリ内に保管されます。子どもの成長に合わせて見直すときも、アプリ上で更新できます。
合意したあとは、共同養育カレンダーで予定を調整したり、定型文が中心のメールで連絡したりできます。メールには、改ざんや削除ができない記録が残り、余分なやりとりを減らして、やりとりが理性的になることを促します。
相手に提案する前に知っておきたいこと
Copakは、父母の交渉を仲介するサービスではありません。話し合いがまとまらない場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。そのうえで、相手に利用を提案する前に、次の点を必ずご確認ください。
- 父母の双方が一般会員(有料)になる必要があります。 共同養育計画書の作成は、一般会員の機能です。一方だけが一般会員でも、一般会員の機能は使えません。申し込む前に、相手と利用するプランについて合意しておいてください。一方だけが加入した場合の返金には対応していません。
- 料金は、1名あたり、半年プランが5,000円、年間プランが8,000円(いずれも税込)です。 半年プランなら、父母2人で10,000円が目安です。子どもが2人以上でも追加料金はかかりません。
- 一般会員の期間が切れると、計画書は保管されたまま閲覧できなくなります。 期間内にダウンロードしておくことをおすすめします。なお、ダウンロードは別料金です。
相手への切り出し方に悩んでいる方は、後日別記事で紹介します。
よくある質問
相手が話し合いに一切応じない場合は、どうすればよいですか?
話し合いが難しい場合は、弁護士等への相談や、家庭裁判所の調停・審判などを利用できるとされています(法務省)。どの手続が合うかは状況によって異なるため、専門家にご相談ください。
子どもに、相手への伝言を頼んでもよいですか?
おすすめできません。子どもが父母の間で板挟みになり、負担を感じることがあります。伝えたいことは、父母の間で決めた連絡の方法で伝えるようにしましょう。
弁護士に頼めば、相手と一切話さずに済みますか?
交渉を任せられる場合がありますが、手続や状況によっては、本人の出席や確認が必要になることもあります。どこまで任せられるかは、依頼する弁護士にご確認ください。
離婚したあとからでも、決められますか?
決められます。法務省は、離婚や別居の前に作成するのが望ましいとしつつ、離婚や別居の後に作成しても構わないとしています。離婚したあとでも、第三者を介する方法やアプリを使って、直接話さずに進められる場合があります。
まとめ
相手と話したくなくても、子どものことを決める方法はあります。
- 決める方法:文字だけでやりとりする/弁護士に間に入ってもらう/ADRを使う/家庭裁判所の調停を使う/アプリで進める、の5つ。組み合わせてもかまいません
- 決めたあと:連絡の方法、受け渡し、予定の変更の進め方を決めておくと、関わりを減らせます
- 文書に残す:決めたことは、共同養育計画書にして残しておくと、あとから確認できます
まずは、無理のない方法を一つ選ぶところから始めてみてください。
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執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部(運営者情報)
最終更新日:2026年10月26日
出典・参考資料
- こども家庭庁「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」(取り決めをしていない理由)https://warp.ndl.go.jp/web/20230410032756/http://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001027754.pdf
- 法務省「離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書」(2026年版)https://www.moj.go.jp/content/001322060.pdf
- 法務省「『離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書』について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00194.html
- 法務省「離婚を考えている方へ」(離婚前)https://www.moj.go.jp/MINJI/1-1.html
- 関係府省庁等連絡会議「Q&A形式の解説資料(民法編)」https://www.moj.go.jp/content/001462991.pdf
- 仙台家庭裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」https://www.courts.go.jp/sendai/saiban/fuufu_rikon/index.html
- 前橋地方・家庭裁判所「憲法週間行事結果報告」(令和8年5月)https://www.courts.go.jp/maebashi/vc-files/maebashi/R8kenposyukangyozikekkahoukoku.pdf
- 法務省「かいけつサポート」https://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/ / 紛争の分野から探す https://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/hanisearch.html
- 法テラス「民事法律扶助業務」https://www.houterasu.or.jp/site/yasasiinihongo/fujo.html
- 沖縄県「親子交流支援事業」https://www.pref.okinawa.jp/kyoiku/kosodate/1008226/1036501/1036530/1036518.html
※この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。
