執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部(運営者情報)
最終更新日:2026年10月22日
「共同親権にしたら、離婚してもずっと相手と関わり続けるの?」
「相手と冷静に話し合える自信がない」
「何から手をつければいいのか、わからない」
2026年4月1日から、離婚後も父母の双方が親権者となる「共同親権」を選べるようになりました。親権とは、子どもの世話や教育(監護・教育)をしたり、子どもの財産を管理したりする、親の権利であり義務とされています。新しい制度だからこそ、何がどう変わるのかがわかりにくく、離婚を考え始めたところで、漠然とした不安を抱えている方は少なくないと思います。
不安を感じるのは自然なことです。ただ、その不安の中には、制度を知ることで小さくなるものと、離婚前の準備で備えられるものがあります。
この記事では、法務省などの公的機関の資料をもとに、次のことをわかりやすく解説します。
- 共同親権での離婚への不安を4つに分けて考える
- 離婚前にやっておきたい準備5つ(お金や書類ではなく、子どもと共同養育の準備に絞ります)
- 準備のゴールである、決めたことを残す方法
共同親権での離婚が不安なとき:不安を4つに分けて考える
「不安」とひとことで言っても、中身はさまざまです。ここでは、よく挙げられる不安を4つに分けて、それぞれに対する事実と、事前の準備でできることを整理します。
1.「制度がよくわからない」:何でも相手の同意が必要になるわけではない
共同親権でも、子どものことをすべて2人で決めなければならないわけではありません。法務省などの資料では次のように整理されています。
- 食事や服装、習い事など、日々の「日常の行為」は、父母の一方が単独で決められるとされています
- 緊急の医療など、子どものために急いで判断する必要がある「急迫の事情があるとき」も、一方が単独で決められるとされています
- 子どもの転居や進学先、心身に重大な影響を与える医療などは、父母が共同で決める必要があるとされています
共同親権にするか、父母の一方だけを親権者にする単独親権にするかは、父母の協議で決め、まとまらないときは、家庭裁判所が子どもの利益の観点から判断するとされています。制度の全体像は、共同親権とは?2026年4月施行の制度と、離婚前に決めておきたいことで詳しく解説しています。
2.「相手と冷静に話し合える自信がない」:話し合いの方法は1つではない
公的機関の資料では、安全・安心な話合いが難しいときは、無理に話し合う必要はないとされています。2人で直接話し合うことだけが決め方ではありません。
- 弁護士などの専門家の支援を受ける:個別の事情に合わせた助言を受けたり、相手との交渉を任せたりする方法です
- ADRを利用する:ADR(裁判外紛争解決手続)は、裁判所の外で、中立な第三者が話し合いを支援する手続です。法務大臣の認証を受けた「かいけつサポート」もあります
- 家庭裁判所の調停を利用する:調停は、裁判官や調停委員が間に入って行う話し合いの手続です
- 顔を合わせずにやりとりできる方法を選ぶ:アプリなどを使って、直接会わずに合意を進める方法もあります
「相手と話し合える自信がない」と感じたときは、自分たちだけでなんとかしようとせず、こうした選択肢の中から選んでかまいません。
3.「子どもに悪い影響がないか心配」:親の争いに巻き込まないことが大切
法務省の資料では、共同養育計画書(後ほど説明します)を作る前に、父母が次のようなことをできるかを確かめるよう示されています。
- 相手に自分の意見を言え、相手の意見にも耳を傾けられる
- 子どもの思いや意見に耳を傾けられる
- 親のけんか(争い)に子どもを巻き込まない
- 子どもの成長に応じて、また話し合える
親の争いに子どもを巻き込まないことは、公的機関の資料でも、子どものために大切な点として挙げられています。「子どもの前で相手を悪く言わない」「子どもを通じて連絡を取り合わない」といった約束を、前もって決めておくこともできます。
子どもへの影響や配慮については、後日別記事で解説します。
4.「離婚後もずっともめるのでは」:もめやすいのは「決め方」が決まっていない場面
離婚後のもめごとは、進学や転居、医療といった大きなことを「誰が、どのように決めるか」「どのように伝えるか」が決まっていない場面で起きやすいと考えられます。具体的な場面と防ぎ方は、共同親権の離婚後に起きやすいトラブル4つと、取り決めで防ぐ方法で解説しています。
お金の不安もあるかもしれません。養育費は、子どもの状況に応じて、子どもの利益の観点から定められるもので、その考え方は共同親権でも変わらないとされています。2026年4月1日以降に、養育費の取り決めをせずに離婚した場合は、子どもと主に暮らす親が、もう一方の親に、子ども1人あたり月2万円を請求できるとされています。ただし、これは取り決めをするまでの暫定的な制度で、「法定養育費」と呼ばれています。くわしくは、取り決めなしで離婚すると困る場面5つと、離婚前に決めておくことをご覧ください。

離婚前にやっておきたい準備5つ:子どもと共同養育の準備に絞って
離婚前の準備というと、お金や書類、住まいのことを思い浮かべる方が多いかもしれません。この記事では、お金や書類の準備には広げず、共同親権で離婚するときの、子どもと共同養育の準備に絞って、5つにまとめました。
準備1:公的機関の情報で、制度の基本を知る
不確かな情報で不安をふくらませないために、まずは公的機関の情報で制度の基本を確かめておきましょう。
法務省の「離婚を考えている方へ」のページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/top.html)には、離婚前・離婚後の情報や相談先が子ども向けのページとあわせてまとめられています。政府広報オンラインにも、2026年4月の改正についての解説が掲載されています。
準備2:子どもの今の生活を書き出す
子どもの今の生活を紙やメモアプリに書き出しておくと、離婚後の子育てをどう分担するかを話し合うときの材料になります。たとえば、次のような内容です。
- 通っている学校や園、習い事
- かかりつけの病院や、持病・アレルギーなどの情報
- 1週間の送り迎えや食事、寝かしつけなどを、今は誰が担っているか
離婚のときには、子どもの監護(日々の世話や教育)を父母でどう分担するかを定めることもできるとされています。これを「監護の分掌」といいます。現状が目に見える形になっていると、「平日はこちら、週末はあちら」といった分担を、具体的に考えやすくなります。
準備3:2人で話し合えるかを確かめ、話し合いの方法を選ぶ
先ほどの、法務省の資料が示す4つの確認(意見を伝え合えるか、子どもの思いに耳を傾けられるか、争いに子どもを巻き込まないか、成長に応じて見直しを話し合えるか)を、自分たちに当てはめて考えてみてください。
「難しそうだ」と感じたら、その時点で、話し合いの方法を選び直す機会です。専門家の支援、ADR、家庭裁判所の調停、顔を合わせずに進める方法など、2人で直接話す以外の道があります。話し合いの方法を前もって選んでおくことも、大切な準備です。
準備4:相談先を確保しておく
一人で抱え込まず、早めに相談先を知っておくことも、準備のひとつです。公的機関の情報で確認できる、離婚前に使える相談先は次のとおりです。
| 相談先 | 相談できること | 連絡先 |
|---|---|---|
| 養育費・親子交流相談支援センター | 養育費や親子交流(離れて暮らす親と子どもが会ったり、連絡を取ったりすること)についての相談(電話・メール・チャット) | 0120-965-419(携帯電話からは03-3980-4108) |
| 法テラス・サポートダイヤル | 法的なトラブルについて、相談先の案内を受けられる | 0570-078374 |
| かいけつサポート(法務大臣の認証を受けたADR) | 裁判所の外で、第三者を交えて話し合う | 法務省のページで事業者を確認 |
| お住まいの市区町村 | 相談窓口や無料の法律相談、離婚前後の親向けの講座など(自治体によって異なる) | 各自治体の窓口 |
自治体によっては、公正証書(公証人が作成する公文書)の作成費用の補助などを行っている場合があります。お住まいの市区町村にご確認ください。受付時間は変わることがあるため、各窓口のページでご確認ください。
準備5:決めることを洗い出し、文書に残す準備をする
離婚前に話し合っておくこととして、公的機関の資料では、次のような項目が挙げられています。
- 親権者
- 子どもの住所(主に暮らす家)と、監護の分担
- 養育費(金額、期間、支払時期と方法など)
- 親子交流(頻度や方法など)
- 転居・医療・進学など、重要なことの決め方
- 再び話し合う条件(「何年経ったとき」「再婚したとき」など)
2026年4月からは、離婚届に、子どもについての取り決めをしたかどうかを答える欄が設けられています。ただし、離婚届に残るのは取り決めの「有無」だけで、何を決めたかは残りません。くわしくは、離婚届の「取り決め」欄とは?2026年4月の改正点と、中身を残す共同養育計画書で解説しています。
準備のゴールは「決めたことを残す」こと:共同養育計画書
準備を進めて、決めることが見えてきたら、最後に大切なのが、決めたことを文書に残すことです。
父母の協議で定めた子育ての分担などの内容は、戸籍に記録されず、公的な文書も作成されないとされています(公正証書にすることは可能とされています)。そのため、決めた内容は、父母自身で残しておく必要があります。
その文書が、共同養育計画書です。共同養育計画書とは、離婚や別居をする父母が、離婚後の子育てについて取り決めておく文書のことです。法務省は、作成しておくことで、子育てに関する負担や、相手とのやりとりによるストレスを減らせるとしています。離婚や別居の前に作成するのが望ましいとされていますが、離婚の後に作成しても構わないとされています。
作成は法律上の義務ではありませんが、公的機関も作成を勧めています。作り方は、自分たちで作る、専門家の支援を受ける、アプリで作る、の大きく3つです。基本は、共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目で詳しく解説しています。
相手と顔を合わせずに決めるなら:Copakの共同養育計画書
「決めておく必要はわかった。でも、相手と向き合って細かく話すのは、つらい」。そうした方のために、一般社団法人 共同監護機構が提供しているのが、共同養育アプリ「Copak(コパック)」の共同養育計画書の作成機能です。アプリ内では「やくそく」という名前で表示されます。
項目ごとに選択肢から選び、合意できたところからまとめる
Copakでは、協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていきます。顔を合わせなくても、提案、確認、代わりの案の返信まで、すべてアプリ内で進められます。この仕組みは特許出願中です。
この記事で取り上げた不安に対応する、次のような決め方もできます。
- 父母のやりとりの方法:アプリを使った連絡に限る、第三者を介する、など
- 子どもの受け渡し:学校への登校や下校をもって受け渡しとし、顔を合わせずに済ませる、など
- 子どもへの接し方:子どもの前で相手を悪く言わない、子どもを通じて連絡を取り合わない、など
- 見直しの時期:1年後や3年後など、改めて話し合う時期を決めておく、など
解説文とテンプレートは、弁護士事務所の監修を受けています。合意した計画書には、父母それぞれが電子印鑑を押します。
離婚協議書に書く主な内容もカバー。単独親権にも対応
Copakの共同養育計画書は、親権や財産分与(婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚のときに分けること)、養育費など、離婚協議書(離婚の条件をまとめた文書)に書く主な内容もカバーしています(年金分割は含みません)。なお、計画書で合意しただけで親権者が決まるわけではなく、離婚届や調停などで定める必要があるとされています。
また、Copakは、共同親権だけでなく、単独親権の場合にも対応しています。共同親権と単独親権のどちらを選ぶか迷っている段階でも使えます。合意したあとも、共同養育カレンダーや定型文が中心のメールで、予定の調整や連絡を、同じアプリで続けられます。なお、Copakは父母の交渉を仲介するサービスではありません。
料金と、相手に提案する前に知っておきたいこと
共同養育計画書の作成は、一般会員(有料)の機能です。料金は1名あたり、半年プラン5,000円、年間プラン8,000円(いずれも税込)で、子どもが2人以上でも変わりません。
- 父母の双方が一般会員になる必要があります。 相手にも同じアプリを利用してもらう必要があり、一方だけでは一般会員の機能は使えません。申し込む前に、相手と利用するプランについて合意しておいてください。一方だけが加入した場合の返金には対応していません。
- 一般会員の期間が切れると、計画書は閲覧できなくなります。 期間内のダウンロード(別料金)をおすすめします。
相手への切り出し方は、後日別記事で紹介します。
よくある質問
離婚するなら、共同親権にしなければいけませんか?
いいえ、そうとは限りません。離婚後は、共同親権と単独親権のどちらかを選べるようになりました。協議離婚(裁判所を通さず、父母の話し合いで成立させる離婚)では、父母の協議で決め、まとまらないときは、家庭裁判所が子どもの利益の観点から判断するとされています。どちらが適しているかは家庭ごとの事情によって異なるため、具体的な状況については、専門家にご相談ください。
別居中でも、準備や共同養育計画書の作成はできますか?
できます。法務省は、共同養育計画書を、離婚や別居の前に作成するのが望ましいとしています。別居中であっても、子どもの生活や、2人で決める事柄について、話し合いを始めておくことができます。
相手が話し合いに応じてくれない場合は、どうすればよいですか?
弁護士などの専門家の支援を受ける、ADRや家庭裁判所の調停を利用するといった方法があります。養育費や親子交流については、養育費・親子交流相談支援センター(フリーダイヤル 0120-965-419)にも相談できます。切り出し方は、後日別記事で紹介します。
まとめ
共同親権での離婚に不安を感じるのは、自然なことです。不安を4つに分けて考えてみると、制度を知ることで小さくなるものと、準備で備えられるものがあることがわかります。
- 離婚前の準備は、公的機関の情報を知る、子どもの生活を書き出す、話し合えるかを確かめて方法を選ぶ、相談先を確保する、決めることを洗い出す、の5つ
- 話し合いの方法は、2人で直接話す以外にもある。難しいときは、専門家の支援やADR、調停、顔を合わせずに進める方法を選べる
- 準備のゴールは、決めたことを共同養育計画書として残すこと
次に読みたい記事
出典・参考資料
- 法務省「離婚を考えている方へ」 https://www.moj.go.jp/MINJI/top.html
- 法務省「離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書」(2026年版)
- 法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」(2026年1月改訂) https://www.moj.go.jp/content/001449160.pdf
- 関係府省庁等連絡会議「Q&A形式の解説資料(民法編)」 https://www.moj.go.jp/content/001462991.pdf
- 政府広報オンライン「離婚後も『共同親権』が選択可能に。改正された子育てに関するルール」 https://www.gov-online.go.jp/article/202607/entry-11439.html
- 政府広報オンライン「法定養育費 取決めがなくても請求できる暫定的な養育費」 https://www.gov-online.go.jp/article/202607/entry-11412.html
- 養育費・親子交流相談支援センター http://www.youikuhi-soudan.jp/index.html
※この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。
