執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部(運営者情報)
最終更新日:2026年10月30日
「共同養育計画書を作ったほうがいいことは、わかった。でも、相手にどう切り出せばいいのかわからない」
「言った瞬間に、ケンカになりそう」
「無視されたら、どうしよう」
共同養育計画書は、父母が合意して初めて成り立つ文書です。そのため、作りたいと思っても、最初の一言で立ち止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、切り出す前に確認しておきたいこと、切り出すタイミング、伝え方の5つのポイント、場面別の例文を紹介します。返事がないときや断られたときの進め方もあわせて解説します。なお、共同養育計画書とは、離婚や別居をする父母が、離婚後の子育てについて取り決めておく文書のことです。
切り出す前に確認しておきたい3つのこと
安全に話し合える状況か
法務省の「こどものための共同養育計画書」は、作成にあたって、父母が次のようなことができるかを確かめておくよう案内しています。相手に自分の意見を自由に伝え、相手の意見にも耳を傾けられること。親の争いに子どもを巻き込まないこと。子どもの成長に応じて、計画の見直しを話し合えること。ここに難しさを感じる場合は、いきなり二人だけで話し合おうとせず、第三者の力を借りる方法を先に考えるのも一つです(共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作る)。
なお、身の危険を感じるなど、安全・安心な話合いが難しいときは、無理に話し合う必要はないとされています(法務省)。一人で抱え込まず、専門家や相談窓口に相談してください。
何のために作るのかを、自分の言葉で言えるか
共同養育計画書は、子どもの健やかな成長のための文書です。同時に、法務省は、作成しておくことで、父母にとっても子育てに関する負担や、相手とのやり取りによるストレスを減らせるとしています。
「相手の行動を縛るための書面」と受け取られると、身構えられるかもしれません。「子どものために」「お互いの負担を減らすために」と、自分の言葉で言えるようにしておくと、切り出しやすくなります。
何を決めたいのか、大まかに把握しておく
政府広報オンラインによると、共同養育計画書の主な記載事項は、親権者、子どもの住む場所や期間による監護の分担、養育費(金額、期間、支払時期・方法)、親子交流(離れて暮らす親と子どもが会ったり、連絡を取ったりすること)、重要な事項の決め方、再協議の条項などです。詳しくは、共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目で解説しています。
ただし、全てを決め切ってから切り出す必要はありません。「まず、どんな項目があるのか、一緒に見てみませんか」という入り方でも十分です。
切り出すタイミング
離婚前なら
法務省の案内によると、共同養育計画書を離婚や別居をする前に作成するのが望ましいとされています。離婚の話し合いが進んでいる段階なら、「離婚の条件」と一緒に「子どものこと」を整理したい、と話を向けやすくなります。
また、2026年4月から、離婚届には子どもの取り決めについて答える欄があります。この欄をきっかけに、「届を出す前に、子どものことを整理しておきたい」と切り出す方法もあります。くわしくは、離婚届の「取り決め」欄とは?2026年4月の改正点と、中身を残す共同養育計画書をご覧ください。
離婚後でも遅くない
すでに離婚している場合でも、共同養育計画書を作ることはできます。
また、父母や子どもの生活スタイルが変わる重要なイベント、例えば、「子どもの小中学校等への入学時」「父母の再婚時」など、事情が変わりやすいタイミングで話し合う機会を決めておくのも一つの案です。進学や引っ越しなど、子どもの生活が変わる節目は、切り出すきっかけになります。
避けたいタイミング
一般論として、次のような場面は、深刻な話し合いは避けたほうが話が進みやすいと言われています。
- 口論や、感情的なやりとりの直後
- 子どもの前や、子どもの受け渡しの場
- 相手が急いでいるときや、疲れているとき
相手が落ち着いて読んだり聞いたりできる時間を選び、「今、少し時間はありますか」と一言たずねてから始めると、身構えられにくくなります。
伝え方の5つのポイント
ここでは、公的機関の資料の考え方に沿って、編集部が整理した5つのポイントを紹介します。うまくいくことを保証するものではなく、状況に合わせて取り入れてください。

1. 「子どものため」と「お互いの負担を減らすため」を軸にする
どちらかを責める言葉ではなく、子どもと、これからの二人の生活のための話だと伝えます。「あなたのために」「私のために」ではなく、「子どものために」「お互いが困らないように」と主語を広げると、受け取られ方がやわらぎます。
2. 過去や離婚の理由と切り分ける
過去の出来事や、離婚に至った理由を持ち出すと、話が本題からそれてしまいます。「これまでのことではなく、これからの子どものことだけを決めたい」と、範囲を限って伝えます。
3. 全部を一度に決めようとしない
最初から、すべての項目を決めようとしないことです。「決められるところから」「決まらないところは、あとで話し合う」と伝えると、相手の負担感が下がります。子どもの成長や状況の変化にあわせて、見直す前提で作る文書だと伝えるのも有効です。
4. 進め方を相手にも選んでもらう
「直接会って話す」「文字で送る」「第三者に入ってもらう」「アプリで進める」など、進め方を一つに決めつけず、相手にも選んでもらいます。自分で選べると、受け入れやすくなる場合があります。
5. 制度の変化を、中立なきっかけにする
「公的機関も、共同養育計画書の作成を勧めているようだ」「離婚届に、子どもの取り決めを答える欄ができた」といった制度の話は、どちらの立場でもない、中立のきっかけになります。個人の要求ではなく、「今は、そういう流れになっているらしい」と伝えられます。
場面別の例文
以下は、あくまで一つの例です。ご家庭一つ一つにそれぞれの事情や特徴があります。この通りに伝えれば合意できるというものでもありませんので、お子さんの年齢や、相手との関係に合わせて、ご自身の言葉に直してお使いください。〇の部分は、状況に合わせて入れ替えてください。
例文1:離婚前に、直接(または電話で)伝えるとき
子どものことで、離婚する前に決めておきたいことを、一緒に整理したいと思っています。あとで二人が困らないようにするためです。全部を一度に決めるつもりはなく、決められるところからで構いません。まず、どんな項目があるのか、一緒に見てもらえませんか。
例文2:LINEやメールで、文字で伝えるとき
これからの子育てについて、相談したいことがあります。子どもの将来にとっても重要なことですので、いくつか決めておきたいことを書面にまとめておきたいと思っています。急ぎではないので、〇日ごろまでに、都合のよい進め方(文字でのやりとりでも構いません)を教えてもらえますか。
返信を急かすと、相手が身構えることがあります。期限を決める場合は、余裕を持たせて、その理由も添えておくと伝わりやすくなります。
例文3:離婚後に、あらためて提案するとき
子どもが〇年生になり、進学も近づいてきたので、子どものことで決めておきたいことを、あらためて整理したいと思っています。これまでの取り決めを見直すだけでも構いません。急ぎではないので、都合のよいときに返事をもらえますか。
例文4:第三者に入ってもらいたいと伝えるとき
二人だけだと、お互いに気持ちが入りすぎてしまいそうなので、第三者に入ってもらって、子どものことを整理できないかと考えています。弁護士のほか、ADR(裁判所の外で、中立の第三者が話し合いを支援する手続)などもあるようです。費用や進め方は、一緒に調べてから決めませんか。
弁護士やADR、調停の進め方は、共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るで紹介しています。
例文5:アプリで進めることを提案するとき
顔を合わせたり、電話で話したりしなくても、項目ごとに提案して、確認し合えるアプリがあるようです。使うには、お互いに同じアプリを利用する必要があります。内容と費用を、一度見てもらえませんか。見たうえで、使うかどうかは一緒に決めたいです。
返事がない・断られたときは
すぐに追いかけず、時間と方法を変える
返事がなかったり、断られたりしても、それが最終的な答えとは限りません。すぐに何度も催促せず、数日から数週間あけて、あらためて連絡してみる方法があります。直接話して反応が悪かったなら、文字で送り直す。逆に、文字では伝わりにくかったなら、短く電話で伝える。同じ内容でも、方法を変えると受け取られ方が変わることがあります。
第三者の力を借りる
二人だけで進めるのが難しい場合は、弁護士に間に入ってもらう、ADRを利用する、家庭裁判所の調停を利用するといった方法があります(法務省)。それぞれの特徴や費用は、共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るで紹介しています。
子どもに伝言を頼まない
相手に直接伝えにくいからといって、子どもに「お母さん(お父さん)に伝えて」と頼むのは避けましょう。子どもが父母の間で板挟みになることがあります。伝えたいことは、父母の間で、文字などの方法で伝えます。直接話さずに決める方法は、離婚後の子どものこと、相手と直接話さずに決める方法|第三者・書面・アプリで紹介しています。
アプリの利用を提案して断られた場合の進め方は、共同養育アプリを相手が使ってくれないときは?断る理由と、進め方3つで紹介しています。
アプリで進めることを提案するなら:Copakの共同養育計画書
「顔を合わせて細かく話すのはつらい」「でも、決めたことは文書で残しておきたい」。そうした方のために、一般社団法人 共同監護機構が提供しているのが、共同養育アプリ「Copak(コパック)」の共同養育計画書の作成機能です。アプリ内では「やくそく」という名前で表示されます。
合意できたところからまとめられる
Copakでは、協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていきます。一方が案を作って提案し、もう一方が内容を確認して、合意できる部分は合意し、合意できない部分は代わりの案や理由を返します。この流れを、顔を合わせずに、すべてアプリ内で進められます。この仕組みは特許出願中です。
「全部を一度に決めようとしない」という、前の章で紹介した伝え方のポイントとも合う進め方です。使い方の流れや機能の詳細は、後日別記事で紹介します。
親権や財産分与(婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚のときに分けること)、養育費など、離婚協議書(離婚の条件をまとめた文書)に書く主な内容もカバーしています(年金分割は含みません)。なお、計画書で合意しただけで親権者が決まるわけではなく、離婚届や調停などで定める必要があるとされています。Copakは、共同親権だけでなく、単独親権の場合にも対応しており、離婚後からでも利用できます。
相手に提案する前に知っておきたいこと
Copakは、父母の交渉を仲介するサービスではありません。話し合いがまとまらない場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。そのうえで、相手に提案する前に、次の点を必ずご確認ください。
- 父母の双方が一般会員(有料)になる必要があります。 共同養育計画書の作成は、一般会員の機能です。一方だけが一般会員でも、一般会員の機能は使えません。申し込む前に、相手と利用するプランについて合意しておいてください。一方だけが加入した場合の返金には対応していません。
- 料金は、1名あたり、半年プランが5,000円、年間プランが8,000円(いずれも税込)です。 半年プランなら、父母2人で10,000円が目安です。子どもが2人以上でも追加料金はかかりません。費用の分担は、申し込む前に二人で話し合っておくと、あとで行き違いが起きにくくなります。
- 名前以外の個人情報は、相手に開示されません。
提案するときは、料金と、双方の登録が必要なことを、最初から正直に伝えるほうが、あとで誤解が生じにくくなります。
例文6:Copakを提案するとき
Copakという共同養育アプリがあります。共同養育計画書を、項目ごとに提案し合って、合意できるところからまとめていけるようです。使うには、二人とも一般会員になる必要があり、料金は1人あたり、半年プランが5,000円、年間プランが8,000円(税込)です。申し込む前に、プランと費用の分担を、二人で決めておく必要があります。まず、公式サイトを見てもらえませんか。見たうえで、使うかどうかは一緒に決めましょう。
よくある質問
相手に「計画書なんて必要ない」と言われたら、どうすればよいですか?
必要性の感じ方は、人によって違います。「何を決めるのか」を一緒に見るだけでも構わない、と伝えてみる方法があります。それでも難しい場合は、弁護士への相談や、ADR、家庭裁判所の調停などを利用できるとされています。なお、共同養育計画書の作成は、法律上の義務ではありません。
離婚したあとからでも、提案できますか?
提案できます。法務省は、離婚や別居の前に作成するのが望ましいとしつつ、離婚や別居の後に作成しても構わないとしています。進学や再婚など、事情が変わる節目は、見直しを提案するきっかけになります。
アプリを使う場合の費用は、どちらが払うのですか?
Copakの料金は、1名あたりで設定されています。父母の双方が一般会員になる必要があるため、申し込む前に、二人で費用の分担についても話し合っておくことをおすすめします。
切り出す前に、相談できるところはありますか?
自治体の相談窓口、法テラス(日本司法支援センター)、法務省の認証ADR「かいけつサポート」、養育費・親子交流相談支援センターなどが、政府広報オンラインで紹介されています。養育費・親子交流相談支援センターは、養育費や親子交流について、電話、メール、チャットで相談できます(相談員は弁護士ではなく、法的な問題を含む場合は、法テラスなどが案内されます)。
まとめ
共同養育計画書を相手に提案するときは、次の点を意識してみてください。
- 確認すること:安全に話し合える状況か。子どものためとお互いの負担軽減という目的を、自分の言葉で言えるか
- タイミング:離婚や別居の前が望ましいとされますが、離婚後からでも遅くありません。進学や再婚などの節目も機会になります
- 伝え方:責めずに、範囲を限り、全部を一度に決めようとせず、進め方は相手にも選んでもらう
- 断られたら:時間と方法を変える。難しければ、弁護士、ADR、調停といった第三者の力を借りる
まずは、例文を参考に、無理のない一言から始めてみてください。
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出典・参考資料
- 法務省「離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書」(2026年版) https://www.moj.go.jp/content/001322060.pdf
- 法務省「『離婚・別居を考えているお父さんお母さんへ こどものための共同養育計画書』について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00194.html
- 政府広報オンライン「離婚後も『共同親権』が選択可能に。改正された子育てに関するルール」 https://www.gov-online.go.jp/article/202607/entry-11439.html
- 法務省「離婚を考えている方へ」(離婚前) https://www.moj.go.jp/MINJI/1-1.html
- 法務省「子どもの健やかな成長のために~離婚後の『養育費の支払』と『面会交流』の実現に向けて~ 子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」 https://www.moj.go.jp/content/001323226.pdf
- 法務省「かいけつサポート」 https://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/
- 法テラス「民事法律扶助業務」 https://www.houterasu.or.jp/site/yasasiinihongo/fujo.html
- 養育費・親子交流相談支援センター https://www.youikuhi-soudan.jp/
※この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。
