執筆:一般社団法人 共同監護機構 編集部
最終更新日:2026年11月2日

「離婚協議書は作った方がいいと聞いたけれど、何を書けばいいのだろう」

「子どものことも、お金のことも、どこまで書いておけば安心なのかわからない」

話し合いで離婚を進めるとき、決めたことを書面に残す方法としてよく挙がるのが「離婚協議書」です。名前は知っていても、何をどのように書けばよいかまでは、なかなかわからないものです。

この記事では、離婚協議書に書いておきたい主な10項目と、項目ごとの書き方のポイント、作るときの注意点を整理します。2026年4月に始まった共同親権の制度や、養育費・財産分与のルールの見直しも踏まえて説明します。

離婚協議書とは?

協議離婚で決めたことを残す書面

日本では、夫婦の話し合いで離婚する「協議離婚」ができます。協議離婚とは、裁判所の手続きを使わずに、夫婦が合意して離婚届を出す離婚の方法です。

離婚協議書は、この話し合いで合意した内容を書面にしたものです。子どもの親権や養育費、財産の分け方などを、夫婦それぞれが確認できる形で残します。一般的には、決まった書式はなく、夫婦が自分たちで作ることもできます。

なお、離婚協議書の作成は、法律上の義務ではありません。ただ、話し合いだけで離婚できる日本だからこそ、決めたことを文書に残しておくことが大切だといえるでしょう。

離婚届だけでは、取り決めの中身は残らない

2026年4月から、離婚届には子どもについての取り決めをしているかどうかを答える欄があります(法務省「離婚届のチェック欄の集計結果」)。ただし、この欄は取り決めの有無などを答えるもので、取り決めの具体的な中身を書く場所ではありません。

また、公的機関の解説資料によると、父母の話し合いで決めた監護の分担などの内容は、戸籍に記録されず、公的な文書も作られないとされています(関係府省庁等連絡会議「Q&A形式の解説資料(民法編)」)。決めた中身を後から確かめられるようにするには、自分たちで書面に残しておく必要があります。

離婚届の欄については、離婚届の「取り決め」欄とは?2026年4月の改正点と、中身を残す共同養育計画書で詳しく解説しています。

取り決めを書面に残さないと起きやすいこと

口約束のまま離婚すると、時間がたつにつれて「そんな約束はしていない」「金額はもっと少なかったはず」と、記憶の食い違いが起きやすくなります。支払日や受け渡しの方法があいまいなままだと、毎回の連絡のたびに話し合いが必要になり、やりとりそのものが負担になることもあります。

2026年4月の民法等の改正で、書面に関わるルールもいくつか変わりました(法務省民事局「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」2026年1月改訂)。

  • 法定養育費:離婚のときに養育費を取り決めていなくても、子どもと主に暮らす親は、離れて暮らす親に対して、子ども1人あたり月額2万円を暫定的に請求できるとされています(2026年4月1日以降の離婚が対象)。ただし、これは取り決めをするまでの暫定的・補充的なものとされ、各自の収入などを踏まえた適正な額を取り決めることが重要とされています。
  • 養育費の先取特権:先取特権とは、ほかの債権より優先して支払いを受けられる権利のことです。改正により、養育費の取り決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続を申し立てられるようになったとされています(上限は子ども1人あたり月額8万円)。
  • 財産分与の請求期間:家庭裁判所に財産分与を求められる期間が、離婚後2年から5年に延びました(2026年3月31日以前に離婚した場合は2年のままです)。

どれも「離婚の後からでも何とかなる」ように見えるかもしれません。しかし、法定養育費はあくまで暫定的な額で、期間が延びても、離婚から時間がたつほど相手と話し合うのは難しくなりがちです。離婚のときに具体的な内容を決めて書面に残しておくことが、子どもと自分の生活を守ることにつながります。

取り決めがないまま離婚した場合に困る場面は、取り決めなしで離婚すると困る場面5つと、離婚前に決めておくことでも紹介しています。

離婚協議書に書いておきたい主な10項目

離婚協議書に書く内容は、家庭の事情によって変わります。ここでは、多くの家庭で検討することになる主な10項目を、3つのまとまりに分けて紹介します。家庭の事情に応じて、ほかの取り決めを加えることもあります。

離婚協議書に書いておきたい主な10項目。手続きと子ども(離婚の合意と離婚届の提出、親権と監護の分担、養育費、親子交流)、お金と財産(財産分与、慰謝料、年金分割、住まい・住宅ローン)、書面の扱い(公正証書にするかどうか、清算条項)の3つに分けた図

文例は、書き方のイメージをつかむための一例です(「甲」「乙」は夫婦それぞれを指す呼び方です)。実際の表現は、家庭の事情に合わせて調整し、必要に応じて専門家にご相談ください。

手続きと子どもに関すること

1. 離婚の合意と、離婚届の提出

夫婦が協議離婚に合意したこと、離婚届を誰が・いつまでに提出するかを書きます。提出の担当と期限を決めておくと、「出したと思っていた」という行き違いを防げます。

甲と乙は、協議離婚することに合意し、乙は〇年〇月〇日までに離婚届を〇〇市役所に提出する。

2. 親権と、子どもの監護の分担

親権とは、子どもの世話や教育をしたり、子どもの財産を管理したりする権利であり義務です。2026年4月からは、離婚後も父母の双方を親権者とする(共同親権)か、一方を親権者とする(単独親権)かを、父母の話し合いで決めることができるとされています。

あわせて、子どもが主にどちらの家で暮らすか、平日と週末でどう分担するかといった「監護の分担」も書いておきます。共同親権の場合に、一方を「監護者」と定めて日々の世話を任せることもできるとされています。

甲と乙は、長男〇〇(〇年〇月〇日生)の親権者を、甲及び乙の双方と定める。

なお、離婚協議書に書いただけで親権者が決まるわけではありません。親権者は離婚届(話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の手続き)で定めます。協議書の内容と離婚届の記載が食い違わないようにしましょう。

3. 養育費

養育費は、子どもが自立するまでの生活や教育にかかる費用です。金額、支払日、支払方法(振込先など)、いつまで支払うか(終期)を、具体的に書きます。

終期は、「成年に達するまで」とすると、成年年齢が18歳に引き下げられたこととの関係で解釈が分かれるおそれがあります。法務省の手引きでは、「22歳に達した後の3月まで」のように具体的に定めることが勧められています(法務省「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」)。

甲は乙に対し、長男〇〇の養育費として、〇年〇月から、長男が22歳に達した後の最初の3月まで、月額〇万円を、毎月末日限り、乙の指定する口座に振り込んで支払う。

入学金や医療費など、毎月の養育費とは別にかかる費用をどう分担するかも、決めておくと安心です。

養育費の取り決めを書面に残しておくことには、もう一つの意味があります。2026年4月の改正で養育費には先取特権が付与され、取り決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続を申し立てられるようになったとされています(子ども1人あたり月額8万円まで)。どのような書面であれば手続きに使えるかは、専門家にご確認ください。

4. 親子交流(面会交流)

親子交流とは、子どもと離れて暮らす親が、子どもと会ったり連絡を取ったりすることです(以前は「面会交流」と呼ばれていました)。頻度、子どもの受け渡しの場所と方法、日程を変えるときの連絡方法などを書きます。

甲と乙は、長男〇〇と、長男と離れて暮らす親との親子交流を、月〇回程度行う。具体的な日時・場所・受け渡しの方法は、長男の利益を最も優先して、甲乙が協議して定める。

「月〇回」だけでは、時間帯や長期休みの扱いで迷うことがあります。具体的に決めておくほど、毎回の調整が少なくて済みます。

お金と財産に関すること

5. 財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻中に一緒に築いた財産を、離婚のときに分け合う制度です。何を、誰が、誰に、いつ、どのように渡すかを書きます。

今回の改正では、財産分与で考慮する事情が例示され、財産を築くことへの夫婦それぞれの寄与の程度は、原則として対等(2分の1ずつ)とされています(法務省民事局のパンフレット)。どの財産をどう評価し、どう分けるかは家庭によって大きく異なるため、迷う場合は専門家に相談しながら決めましょう。

6. 慰謝料(ある場合)

慰謝料とは、離婚の原因によって受けた精神的な苦痛に対して支払われるお金です。すべての離婚で発生するものではありません。支払うことにした場合は、金額、支払方法、支払期限を書きます。

7. 年金分割

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の記録を、離婚した夫婦で分ける制度です。分割の割合について合意した場合は、その内容を書いておきます。

年金分割の請求は年金事務所で行い、請求期限は原則として離婚した日の翌日から5年です(2026年4月1日より前に離婚した場合は2年。日本年金機構)。必要な書類は、年金事務所にご確認ください。

8. 住まい・住宅ローン

離婚後に誰がどこに住むか、持ち家の場合は名義や住宅ローンの支払いを誰が担うかを書きます。名義を変える登記の手続きは、司法書士などの専門家に相談するのが一般的です。

財産分与・慰謝料・年金分割の詳しい決め方と注意点は、後日別記事で解説します。

書面の扱いに関すること

9. 公正証書にするかどうか

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書です。養育費や財産分与など、お金の支払いの約束をした場合に、離婚協議書の内容を公正証書にするかどうかを話し合っておきます。

法務省のパンフレットでは、公正証書は、調停調書や審判書と並んで、差押えの申立てに必要な「債務名義」の例として挙げられています。公正証書にする流れは、後日別記事で解説します。

10. 清算条項

清算条項とは、「この書面に書いたこと以外に、お互いに請求できるものはない」と確認する条項です。離婚後のもめごとを防ぐ目的で入れることが多いとされています。

一方で、財産を書き漏らしたまま清算条項を入れると、後から請求できなくなるおそれがあるといわれています。入れるかどうか、入れる場合の書き方は慎重に検討し、不安があれば専門家にご相談ください。

離婚協議書を書くときのポイント

「誰が・何を・いつ・どのように」を具体的に書く

「できるだけ会わせる」「必要な費用は相談する」といった書き方は、受け取り方が人によって変わります。金額は数字で、期限は日付で、方法は具体的な手段で書くと、後から読み返したときに迷いません。

盲点になりやすいポイントを確認する

毎月の養育費や交流の頻度に比べて、次のような場面は盲点になりやすいポイントです。

  • 夏休みや年末年始など、長期休みの過ごし方
  • 入学金や塾代、大きな医療費など、毎月の養育費とは別にかかる費用
  • 学校からのお知らせや成績の共有
  • 引っ越しや進学など、子どもの生活が大きく変わる場面
  • 取り決めを見直すタイミング

共同親権では、進学や転居など父母が一緒に決める場面が増えます。こうした場面のトラブルは、共同親権の離婚後に起きやすいトラブル4つと、取り決めで防ぐ方法で紹介しています。

作成日を入れ、それぞれが保管する

一般的には、作成日を書き、夫婦それぞれが署名・押印して、同じものを1通ずつ保管します。書面がどのような場面でどう扱われるかは、最終的には裁判所が判断することになるため、大切な取り決めについては専門家に相談しておくと安心です。

話し合いが難しいときは、無理をしない

相手からの暴力や暴言があるなど、安全・安心な話合いが難しいときは、無理に話し合う必要はないとされています(法務省、政府広報オンライン)。家庭裁判所の調停や、第三者が間に入る話し合い(ADR)、弁護士への相談などの方法があります。

相手と直接顔を合わせずに決める方法は、離婚後の子どものこと、相手と直接話さずに決める方法|第三者・書面・アプリで解説しています。

子どもの取り決めは「共同養育計画書」で細かく残す

離婚協議書には、子どものことも、お金や財産のことも書きます。ただ、子どもの取り決めは、成長とともに見直しが必要になることが少なくありません。

そこで役立つのが「共同養育計画書」です。共同養育計画書とは、離婚後の子育てについて、父母が話し合って決めたことをまとめた書面です。一般的には、次のように使い分けられます。

離婚協議書共同養育計画書
主な内容離婚の合意、親権、養育費、財産分与など、離婚時の取り決め全般子どもの暮らし、交流、学校や医療の決め方など、子どもの取り決め
見直し離婚時に確定し、基本的に更新しない子どもの成長に合わせて見直していく

共同養育計画書は、子どもの生活を安定させるだけでなく、父母のやりとりの負担を減らし、将来のもめごとを防ぐことにも役立ちます。公的機関も作成を勧めています。詳しくは共同養育計画書とは?離婚前に作ることが勧められる理由と決める項目をご覧ください。

2つの書面の違いと使い分けは、後日別記事で詳しく解説します。

離婚協議書・共同養育計画書の作り方

書面の作り方には、大きく分けて次の3つがあります。

  • 自分たちで作る:公的機関や支援団体が公開している記載例などを参考に、夫婦で作る方法です。費用はかかりにくい一方、どこまで具体的に決めるか、相手とどう合意するかは自分たちで考える必要があります。
  • 専門家に頼む:弁護士などに作成を依頼する方法です。法的な観点から確認してもらえる一方、依頼内容によっては費用が比較的高額になりやすいです。
  • アプリで作る:項目を選びながら作れるアプリもあります。相手にも同じアプリを利用してもらう必要があります。

それぞれの特徴は、共同養育計画書の作り方3つ|自分で・専門家に頼む・アプリで作るで比べています。

共同養育計画書は、Copakアプリで作ることもできます。協議する項目ごとに選択肢から選び、父母が合意できた項目から計画書にまとめていく仕組みです。利用には、父母の双方が一般会員(有料)になる必要があります。

Copakアプリの共同養育計画書を見る

まとめ

  • 離婚協議書は、協議離婚で合意した内容を書面にしたものです。作成は義務ではありませんが、離婚届だけでは取り決めの中身は残りません。
  • 主な項目は、離婚の合意と届出、親権と監護の分担、養育費、親子交流、財産分与、慰謝料、年金分割、住まい、公正証書にするかどうか、清算条項です。
  • 「誰が・何を・いつ・どのように」を具体的に書き、盲点になりやすい場面も確認しましょう。
  • 子どもの取り決めは、成長に合わせて見直せる共同養育計画書で細かく残しておくと、離婚後の運用がしやすくなります。

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よくある質問

離婚協議書は手書きでもよいですか?

一般的には、決まった書式はなく、手書きでもパソコンで作ったものでもかまわないとされています。大切なのは、内容が具体的で、夫婦の双方が確認したことがわかる形になっていることです。

離婚した後でも作れますか?

離婚した後でも、夫婦が合意すれば作ることはできます。ただし、財産分与の請求や年金分割の請求には、原則として離婚から5年の期限があります(2026年3月31日以前に離婚した場合は2年)。早めに取り決めておくと安心です。

相手が離婚協議書の作成に応じないときは、どうすればよいですか?

家庭裁判所の調停や、第三者が間に入る話し合い(ADR)を利用する方法があります。調停とは、調停委員が間に入って話し合いを進める家庭裁判所の手続きです。弁護士や、法テラス、養育費・親子交流相談支援センターなどの相談先もあります。

離婚協議書と共同養育計画書は、両方作る必要がありますか?

どちらも法律上の義務ではありません。一般的には、離婚協議書は離婚時のお金や財産を含めた取り決め、共同養育計画書は子どもの取り決めを、成長に合わせて見直していくものとして使い分けられます。子どもがいる場合は、子どもの取り決めを共同養育計画書で細かく残しておくと、離婚後の運用がしやすくなります。

離婚協議書は公正証書にしないと意味がありませんか?

公正証書にしなくても、取り決めを書面に残すことには、内容を確認し合い、行き違いを防ぐという意味があります。公正証書にするかどうかは、支払いの内容や相手との関係などを踏まえて検討します。お金の支払いを確実にしたい場合などは、専門家に相談してみてください。

参考資料

この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な状況については、弁護士などの専門家にご相談ください。